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医療機関のみなさまへ

[2018年5月17日]

ID:17911

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新型インフルエンザの診療における医療機関の役割について

1.医療機関の区分と役割

(1)全医療機関に求められる役割

・医療機関(歯科医療機関を含む。以下同じ。)は、新型インフルエンザ発生前には、院内感染対策や流通の不足が見込まれる医療資器材の確保や物品の備蓄に努める。
・発生時において、その役割に応じて医療を継続して提供するため、新型インフルエンザ患者及び疑い患者(以下「患者等」という。)の診療を行う場合は、その体制も含めた、診療継続計画の策定やシミュレーションを行う等事前の準備に努める。とりわけ、登録事業者(特措法第28条第1項第1号に規定)においては、診療継続計画の策定は、登録の際の要件となっている。
・帰国者・接触者外来開設医療機関については、病原性が不明な時期(府内未発生期~府内発生早期)に患者を受入れることとなることから、個人防護具等を市が配布する。帰国者・接触者外来については、保健所があらかじめリスト化する。

(2)医療機関の区分とその役割

区分ごとの役割

区分

役割

(1)感染症指定医療機関

【未発生期】

・受入体制の整備、新型インフルエンザの診療に必要な医療資機材の整備、訓練等を実施する。

 

【府内未発生期~府内発生早期】

・帰国者・接触者外来の開設。

・感染症法に基づく入院措置患者の受入れ。

・診断確定までの間の疑い患者の積極的な入院受入れ。

・積極的に入院患者等を受入れ、適切に医療の提供を行う。

 

【府内感染期】

・重症の新型インフルエンザ患者の積極的な受入れ。等

(2)協力医療機関

【未発生期】

受入体制の整備、新型インフルエンザの診療に必要な医療資機材の整備、訓練等を実施する。

 

【府内未発生期~府内発生早期】

・帰国者・接触者外来の開設。

・感染症指定病床が満床となった場合に、感染症に基づく入院措置患者の受入

 

【府内感染期】

・新型インフルエンザの入院対象患者の積極的な受入れ等。

(3)地域の中核的医療機関

 

【未発生期】

・受入体制の整備、新型インフルエンザの診療に必要な医療資機材の整備、訓練等を実施する。

 

【府内未発生期~府内発生早期】

・新型インフルエンザ患者以外の重症患者の積極的受入れなど、地域の医療体制確保への積極的な協力。

 

【府内感染期】

・新型インフルエンザの入院対象患者の積極的な受入れ等。

(4)一般の医療機関

(内科・小児科等、通常、感染症の診療を行う全ての一般の医療機関)

【府内感染期】

・院内感染防止対策を行い、通常の診療と併せ、可能な範囲で新型インフルエンザ患者の診療を行う。

・登録事業者に登録した一般の医療機関においては、事前に定めた業務継続計画により、診療を継続する努力義務を有する。

・病診連携等により在宅療養の患者の診療を行う。

(5)歯科医療機関

・歯科を標榜していない病院と連携し、人工呼吸器を装着している患者等の口腔ケアを行う。

・歯科救急の実施をはじめ適切に歯科医療を提供する。

(6)薬局

(調剤を実施する薬局)

・感染対策を講じた上で業務の継続

・ファクシミリ処方箋への対応

・在宅療養者への対応

※新型インフルエンザの診療をしない医療機関を含め、全医療機関において、診療継続計画の策定及び院内感染対策が求められる。

※予防接種における医療機関の役割は、予防接種に関するマニュアルに記載する。

※発生した新型インフルエンザの病原性等によっては、また、新感染症の場合においては、各医療機関の役割は、この限りでない。

2.感染症指定医療機関の概要

(1)現状

(1) 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10 年法律第114 号。以下「感染症法」という。)第38 条に基づく第1種及び第2種感染症指定医療機関については、当該医療機関の同意を前提に、都道府県知事が厚生労働大臣の定める基準に適合する医療機関の中から指定するとされている。
(2) 感染症指定医療機関の配置基準は、「平成11 年3月19 日健医発第457 号厚生省保健医療局長通知」により第1種感染症指定医療機関については都道府県ごとに1か所・2床、第2種感染症指定医療機関については二次医療圏ごとに1か所、かつ、人口に応じた病床数がそれぞれ示されている。

(2)府内の感染症指定医療機関と病床数(平成26年4月1日)

病院名

病院名

病床数

医療圏

特定

第1種

第2種

市立豊中病院

 

 

14床(0)

豊能

三島

市立ひらかた病院

 

 

8床(8)

北河内

大阪市立総合医療センター

 

1床

32床(4)

大阪市

中河内

市立堺病院

 

1床

6床(6)

堺市

府立呼吸器・アレルギー医療センター

 

 

6床(6)

南河内

りんくう総合医療センター

2床

2床

6床(6)

泉州

2床

4床

72床

 

※第2種( )内は陰圧病床数。但し、市立堺病院は新設竣工後の病床数
【参考】

区分

概要

指定者

特定感染症指定医療機関

新感染症の所見がある患者、一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させる医療機関

厚生労働大臣

第1種感染症指定医療機関

一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させる医療機関

都道府県知事

第2種感染症指定医療機関

二類感染症、新型インフルエンザ等感染症の患者の入院を担当させる医療機関

都道府県知事

※特定感染症指定医療機関は、全国で以下の3カ所が指定されている。

○成田赤十字病院(千葉県) 2床 ○国立国際医療研究センター病院(東京都) 4床

○りんくう総合医療センター(大阪府) 2床

【参考】感染症指定医療機関配置図

3.協力医療機関(大阪府新型インフルエンザ等協力医療機関)の概要

(1)定義

協力医療機関とは、新型インフルエンザの患者の治療を行う医療機関で、申請に基づき大阪府知事が登録するもの。

府内の保健所と連携し、新型インフルエンザの患者の治療を行うことにより、感染拡大防止に寄与する医療機関。

(2)区分

区分ごとの概要

区分

概要

●診療協力医療機関(拠点型・協力型併せて、人口10万人に1か所設置が目安)

帰国者・接触者外来

(拠点型)

府内の各保健所管内において、新型インフルエンザの外来診療を行うに必要な院内感染対策が講じられている、地域における拠点的な医療機関。

帰国者・接触者外来

(協力型)

拠点型の帰国者・接触者外来を補完するものとして、標準的な院内感染対策が施されている、地域における身近な医療機関。

帰国者・接触者外来

(ハイリスク型)

新型インフルエンザに感染した場合に重症化する可能性の高い透析患者や妊婦、小児慢性特定疾患等ハイリスク患者に対する専門的な外来を行うに必要な院内感染対策が講じられている医療機関。

●入院協力医療機関

入院による必要な医療を提供するものとする。

(3)登録

手続き内容

手続き

内容

登録の申請

協力医療機関を運営しようとする医療機関の開設者は、事前に知事と協議の上、知事に登録を申請する。

登 録

知事は、前号の規定により提出された登録申請書を審査の上、協力医療機関として登録する。

通 知

知事は、協力医療機関を登録した場合は、別紙様式第2号により、当該協力医療機関の開設者に対して通知する。

※大阪府新型インフルエンザ等協力医療機関整備要綱から抜粋
【参考】府内保健所管轄市町村一覧(平成26年4月1日現在)

保健所名

管轄市町村

池田保健所

池田市・箕面市・豊能町・能勢町

吹田保健所

吹田市

茨木保健所

茨木市・摂津市・島本町

寝屋川保健所

寝屋川市

守口保健所

守口市・門真市

四條畷保健所

四條畷市・交野市・大東市

八尾保健所

八尾市・柏原市

藤井寺保健所

藤井寺市・羽曳野市・松原市

富田林保健所

富田林市・河内長野市・大阪狭山市・太子町・河南町・千早赤阪村

和泉保健所

和泉市・泉大津市・高石市・忠岡町

岸和田保健所

岸和田市・貝塚市

泉佐野保健所

泉佐野市・泉南市・阪南市・熊取町・田尻町・岬町

大阪市保健所

大阪市

堺市保健所

堺市

東大阪市保健所

東大阪市

高槻市保健所

高槻市

豊中市保健所

豊中市

枚方市保健所

枚方市

【参考】新型インフルエンザ等協力医療機関整備状況(平成26年9月現在)

保健所名

協力医療

機関数

 

入院協力

医療機関

帰国者・接触者外来

拠点型

協力型

ハイリスク

池田保健所

11

2

3

8

0

吹田保健所

4

4

3

0

1

茨木保健所

11

3

1

9

1

寝屋川保健所

10

6

3

4

1

守口保健所

5

4

4

1

0

四條畷保健所

4

4

3

1

0

八尾保健所

9

4

3

5

0

藤井寺保健所

7

4

3

3

1

富田林保健所

10

1

3

7

0

和泉保健所

6

6

2

1

0

岸和田保健所

12

3

4

10

2

泉佐野保健所

9

6

3

4

2

大阪市保健所

43

24

15

29

5

堺市保健所

14

10

1

4

5

東大阪市保健所

5

4

0

3

1

高槻市保健所

7

7

3

3

3

豊中市保健所

10

2

3

7

0

枚方市保健所

12

11

4

7

4

新型インフルエンザの診療における医療機関の事前準備について

保健所は、未発生期において医療機関に対し、医療機関の規模や機能に応じて、適切に事前準備を促すものとする。

1.診療(業務)継続計画

(1)定義

特措法において、指定(地方)公共機関制度や特定接種に関する登録制度といった新たな制度が設けられたところである。これらの指定や登録を受ける医療機関は、新型インフルエンザ等対策に関する業務計画( 以下「業務計画」という。) や事業継続計画(Business Continuity Plan :BCP)を作成する必要がある。
一般的に、医療機関における事業継続計画は、診療継続計画と呼ばれている。当ガイドラインにおいても、診療継続計画(BCP)という用語を用いる。
なお、政府行動計画及び府行動計画では、全ての医療機関において、医療機関の特性や規模に応じた診療継続計画の作成が求められている。

(2)考え方

医療機関は、府内感染期において極端に増加する患者への対応や出勤可能な職員数等の影響を踏まえ、医療機関の特性や規模に応じた医療を提供するための診療継続計画を作成する。新型インフルエンザについては全ての医療機関が作成すべきとされているが、新感染症については、施設面、人員面にて対応できる限られた医療機関において対応するものとし、これ以外の医療機関については新型インフルエンザを中心に作成する。

(3)入院可能病床数の試算

病床利用率や診療継続計画に基づき入院可能病床数(定員超過入院等含む)の10%もしくは20%程度の新型インフルエンザ入院患者が発生すると想定して診療継続計画を作成する。

(4)連携体制の構築

1.院内の連携体制
上記の入院可能病床数を試算した上で、新型インフルエンザの患者が発生した場合、どの病床を新型インフルエンザの患者専用にしていくか、患者の増加に従い新型インフルエンザ専用病棟から一般入院患者をどの病棟へ移動していくかについても、院内で検討しておく必要がある。

2.院外の連携体制
新型インフルエンザが発生した場合に備えるため、市が組成する枚方市災害医療対策会議において検討された内容等に基づき、市域における連携体制について検討しておく。
発生当初は、帰国者・接触者外来を開設する感染症指定医療機関や協力医療機関などでの限定的な対応となるが、府内感染期には一般の医療機関でも対応が求められる。
患者の発生状況にもよるが、新型インフルエンザ以外の二次救急や産科、透析、在宅などの医療を継続して行えるような連携体制が求められる。

(5)診療(業務)継続計画作成のポイント

【基本事項におけるポイント】
(1)基本方針 「府内未発生期及び府内発生早期の対応」、「府内感染期の対応」、「患者数が大幅に増加した場合の対応」についての基本方針を決定する。
(2)体制整備
・未発生期の体制整備
対策立案の体制を整備する。ICT(Infection Control Team)が中心となる、ワーキンググループの設置など。
・発生期における体制整備
院内の対策本部の設置の検討。連絡網の作成。帰国者・接触者外来の準備など。

 【各発生段階におけるポイント】
(1)府内未発生期から府内発生早期における対応の準備
※帰国者・接触者外来を設置する感染症指定医療機関を想定した場合
ア.帰国者・接触者外来の設置について
・手順書等の作成(受付、待合、診察、会計までのフローチャートの作成)
・患者動線の確認
・帰国者・接触者外来の設置準備など
・必要物品の準備、清掃の手順書の作成、担当する医師・看護師・受付などのシフト表などの作成等
イ.入院病床(感染症病床)について
空気感染対策に準じた対応を行う(陰圧設定の確認、必要な個人防護具の準備等)。

 (2)府内感染期における対応と準備
ア.外来における対応
・新型インフルエンザの患者が新型インフルエンザ以外の患者と接触しないよう、入口・受付窓口・待合を時間的/空間的に分離する。
・空間的もしくは時間的な分離が困難な場合は、新型インフルエンザの患者について、診療を行う際は、患者にマスク着用を指導する。
・咳エチケット等のポスター掲示
・患者対応のフローチャートの作成
・必要物品の準備
イ.入院における対応
患者数の増加に伴い、(「陰圧個室隔離」⇒)「一般個室隔離」⇒「コホート隔離(新型インフルエンザの患者を一つの部屋に収容する)」⇒新型インフルエンザ専用の病棟を設定する。

【患者数が大幅に増加した場合のポイント】
(1)新型インフルエンザの診療の需要を減らす方策(外来における対応)
・外来で診察を受けた新型インフルエンザの患者のうち、重症でないと診断された場合は原則として自宅療養とする。
・慢性疾患等を有する定期受診患者のうち、病状が比較的安定している患者に対しては長期処方を行うなど受診回数を減らす。
(2)新型インフルエンザの診療の需要に対応する方策について(入院における対応)
・待機的入院や待機的手術は控え、自宅での治療が可能な入院患者については、病状を説明した上で退院を促し、新型インフルエンザの重症患者のための病床を確保する。
(3)新型インフルエンザの診療の供給を減らさない方策について
ア 予防接種
・医療従事者に対する予防接種として、特定接種の登録を行う。
実際に特定接種を行う際には、登録した人数のワクチンが供給されない場合があること、順次ワクチンが供給される可能性があることを踏まえ、医療機関内での接種対象者・接種順位の考え方を整理し、従業員の理解を得るようにしておく。
イ 予防投与(抗インフルエンザウイルス薬の予防投与について)
・府内未発生期及び府内発生早期において、十分な感染防止策を行わずに、患者に濃厚接触した医療従事者等に対し、抗インフルエンザウイルス薬の予防投与を実施する。
・府内感染期以降については、増加する新型インフルエンザ患者への治療を優先する。
・職員が発熱などの症状を認める際には、出勤せずに医療機関を受診するよう、平時より注意喚起を行う。

【感染対策におけるポイント(個人防護具)】
(1)新型インフルエンザを想定した感染対策
・標準予防策に加え、飛沫感染予防策・接触感染予防策を実施する。
・「サージカルマスク・ガウン・手袋」の着用を基本とし、患者との接触状況に応じて個人防護具を選択する。
・個人防護具着用の前後に必ず手指衛生(流水と石けんによる手洗い・速乾式手指消毒剤による手指消毒)を行う。
(2)病原性がわからない新型インフルエンザ及び新感染症の留意事項
・病原性がわからない新型インフルエンザ患者に対しエアロゾルを発生する可能性のある手技(気管内挿管、気管支鏡、ネブライザー手技、喀痰採取手技、気管吸引、BiPAP(※1)やCPAP(※2)などの陽圧呼吸など)の際や、空気感染する新型感染症が発生した場合、患者と接する際にはN95マスクの着用を考慮する必要がある。
※1 Bi-phasic Positive Airway Pressure
一般的には、(気道内)圧を2つ設定し、交互に気道内圧を変更する事を指す。
※2 Continuous Positive Airway Pressure
鼻に装着したマスクから空気を送りこむことによって、ある一定の圧力を気道にかける方法

(6)医療資機材の整備

災害用などに備蓄している医療資機材(マスク、ガウン、手袋、簡易ベッド等)や非常食(患者用、職員用)等を確認し、新型インフルエンザ等対策で共用できる物資をリスト化しておく。
(特措法第11条には、新型インフルエンザ等の物資及び資材の備蓄と、災害対策基本法第49条の規定による物資及び資材の備蓄とは、相互に兼ねることができるとあり、これを適用。) 

(1)個人防護具等の確保(院内感染防止対策用)について

以下の個人防護具及び速乾性手指消毒剤等の使用状況・在庫状況を把握するとともに、必要に応じて、備蓄あるいは在庫量を増やす。○ゴーグル、フェイスシールド
○マスク(N95マスク、サージカルマスク、シールド付きマスク)
○ガウン・エプロン・手袋(ゴム等アレルギー者への対応も考慮する)
○速乾式手指消毒剤
○石けん、ペーパータオル
○環境消毒用の物品 等

(2)医薬品、検査薬の確保(診療用)について

以下の医薬品・検査薬の使用状況・在庫状況を把握する
○インフルエンザ迅速診断キット
○抗インフルエンザウイルス薬
○必要に応じて解熱鎮痛薬(病原性が軽い場合には、重症化しやすいハイリスク群以外には抗インフルエンザウイルス薬は必要にならない場合もあり、対症療法としての解熱鎮痛薬の確保が必要となる場合がある。解熱鎮痛薬はアセトアミノフェンが基本薬となる。)
○抗菌薬(ペニシリン系抗菌薬や第1世代、第2世代セフェム系抗菌薬、必要に応じてカルバペネム系抗菌薬やバンコマイシンなどのグリコペプタイド系抗菌薬):インフルエンザにり患後、肺炎球菌、溶血性連鎖球菌、黄色ブドウ球菌などの細菌による2次性肺炎が生じる場合がある。

(3)医療機器の確保(重症患者診療用)について

以下の医療機器について、使用可能機器の作動状況等を把握する
○輸液・シリンジポンプなど
○人工呼吸器
○血液浄化装置
○心肺補助装置 等


2.院内感染対策

(1)考え方

季節性インフルエンザの伝播経路は、飛沫感染が主体と考えられている。また、飛沫が付着した環境表面に触れた手で口や鼻を触って感染が伝播する、間接的接触感染の要素もあると考えられている。
空気感染については、それを示唆する事例はあるが、ほとんどないと考えられる。そのため、標準予防策に飛沫感染と接触感染対策を付け加えることにより対応する。
しかしながら、新型インフルエンザの場合には、感染伝播様式がはっきりわかるまでは上記の標準予防策(標準予防策:全ての患者の血液、汗を除く唾液等の体液、分泌物、排泄物、健常でない皮膚、粘膜は、感染性があるものとして対応すること。手指衛生、個人防護具の使用、患者配置、周辺環境整備などが含まれる。)、飛沫感染予防策、接触感染予防策に加え、診療行為の内容によっては、空気感染予防策を加えることとなる。
感染伝播様式が確認された場合には、速やかに対策を変更する。

(2)新型インフルエンザに対する標準予防策

・アルコールを基本とした速乾式手指消毒剤による手指消毒を医療従事者のみならず、咳、くしゃみなどをした後、顔に手を触れた患者にもさせる。
・医療従事者は、常日頃から手指消毒の訓練(グリッターバグ※など活用)をしておく必要がある。
※グリッターバグ:手指の洗浄を評価し、トレーニングする教材。
・病原性などがわかるまで咳などをする人のケアをする医療従事者は手袋、サージカルマスク(エアロゾルを発生する医療行為ではN95マスク)に加え、フェイスシールドやゴーグルなどを使用する。
・眼の粘膜からインフルエンザが感染した報告があるので眼も保護するが、患者がサージカルマスクをしている状況であれば眼を保護する必要はない。
・個人防護具の着脱についても、事前に訓練をしておく。
・咳、くしゃみなどの症状がある患者に対してはサージカルマスクを着用させる(咳エチケット)。
・新型インフルエンザが疑われる患者と一般患者を空間的/時間的に分離する。 等

(3)外来における院内感染対策(病原性などが確認できるまで)

・全ての医療従事者が標準予防策を徹底し、必要に応じて飛沫予防策と接触感染対策を追加する。
・発熱や呼吸器症状を有する患者には、サージカルマスクを着用させるとともに、咳エチケットを推奨する。
・発熱や呼吸器症状を有し新型インフルエンザを疑う患者を診療するエリアに従事する医療従事者は、サージカルマスクの着用が望ましい。新型インフルエンザ以外の患者の診療エリアでは、医療従事者のサージカルマスク着用は不要。
・新型インフルエンザの流行期間中に窓口業務に従事する医療従事者には、サージカルマスクの常時着用を考慮する。
・迅速検査のための検体採取の際は、サージカルマスクと手袋の着用、飛沫予防のためにゴーグルまたはフェイスシールドを使用する。
・エアロゾルが発生するおそれのある医療行為を行う場合には、適宜N95マスクの着用を考慮する。
・外来業務中は患者毎のマスクの交換が困難なことが想定されるため、飛沫によりマスク表面が汚染された際には必ず交換する。マスクを外す際、表面がウイルスで汚染されているため触れないよう注意し、マスクを外した直後には必ず手指消毒を実施する。

(4)入院における院内感染対策

・インフルエンザ様疾患の患者病室に入室する際には、サージカルマスクを着用する。マスクを外す際、表面がウイルスで汚染されているため触れないよう注意し、マスクを外した直後には必ず手指消毒を実施する。
・ナースセンターや廊下においては、マスクの常時着用は必要ない。
・エアロゾルが大量に発生するおそれのある手技を行う場合には、適宜N95マスクの着用を考慮する。

(5)ハイリスク患者(ICU入室患者、透析患者、易感染性患者など)

・易感染性患者とは、糖尿病、肝硬変、腎不全、低栄養、悪性腫瘍などの基礎疾患を持つ患者や、ステロイド、抗がん剤、免疫抑制剤の投与、放射線治療を受けた患者などを指す。これらの患者では、免疫機能が障害されているため、通常、健常人と比べて、抵抗力がなく、感染しやすい。
・重篤化しやすい患者とは、慢性肺疾患(喘息、慢性閉塞性肺疾患等)、慢性心疾患、糖尿病などの代謝性疾患などの基礎疾患を有する者や妊産婦、小児(新生児)が挙げられる。このような患者には、あらかじめ手指衛生の励行や人混みではマスクを着用することなどについて生活指導を行い、異常があれば医師に相談するよう指導する。
・診療を担当する医療従事者は、常に体調管理に留意し、体調不良時は速やかに業務を中止し医師の診察により就業の可否を決定すべきである。また、サージカルマスクの一律の着用の予防効果については確立していないが、流行期間中においては新型インフルエンザの患者を診察するエリア内では常時着用する。

(6)エアロゾルが発生する手技への対応

・エアロゾルが発生する手技とは、気道吸引、気管支鏡検査、気管内挿管、蘇生などがあげられる。特にインフルエンザ様症状を呈している患者に対しては、リスクが大きいため注意を要する。
・これらの手技は、可能な限り隔離された空間内(検体採取室や個室など)で実施する。
・このような手技を行う際、医療従事者はN95マスクの着用を考慮する。
・また手袋とゴーグル又はフェイスシールドを着用する。
・鼻咽頭スワブ※採取については、原則、サージカルマスクでよいが、気道の感染状態により、咳が誘発されやすく、飛沫核が大量に産生されることが懸念される場合では、N95マスクの着用を考慮する。
※スワブ:ふき取り検体
・N95マスク着用の際には、着用の都度、ユーザーシールチェック※を実施する。N95マスクの着用が不慣れな医療従事者に対しては、事前にフィットテストなどを用いて教育しておくことが望ましい。
※ユーザーシールチェック
装着する度にマスクの適正な密閉を確認するもの。具体的には、両手でマスクを完全に覆うようにして息を吐く。その際に鼻の周りなどから息が漏れているようなら密閉性が十分ではない。再度正しい着用を行い、ゴムひもの調整を行う。


◆参考・引用文献◆
1. 平成25年度 厚生労働科学研究費補助金 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業 「新型インフルエンザ等発生時の市町村におけるワクチンの効率的な接種体制のあり方の検討」分担研究「新型インフルエンザ等に対する医療機関におけるBCP策定の手引きの検討」平成25年 政府行動計画・ガイドラインを踏まえた「医療機関における新型インフルエンザ等対策立案のための手引き」(平成25 年9月 暫定1.1 版)分担研究者:田辺正樹 三重大学病院医療安全・感染管理部副部長 研究協力者:岡部信彦 川崎市健康安全研究所所長 研究協力者:川名明彦 防衛医科大学校内科学2(感染症・呼吸器)教授 研究協力者:大曲貴夫 国立国際医療研究センター国際感染症センター長
2.Bacterial Coinfections in Lung Tissue Specimens from Fatal Cases of 2009 Pandemic Influenza A (H1N1) --- United States, May--August 2009 Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR) October 2, 2009 / 58(38);1071-1074
3.2007 Guideline for Isolation Precautions: Preventing Transmission of Infectious Agents in Healthcare Settings Jane D. Siegel, MD et.al Healthcare Infection Control Practices Advisory Committee (HICPAC)
4.Pandemic Influenza Preparedness and Response Guidance for HealthcareWorkers and Healthcare Employers Occupational Safety and Health Administration U.S. Department of Labor
5.平成20 年度厚生労働科学研究費補助金「新型インフルエンザ大流行時の公衆衛生対策に関する研究」いまからできる! 一般医療機関のための 新型インフルエンザまん延期の診療継続計画作り 主任研究者:東北大学大学院医学系研究科微生物学分野教授押谷 仁
6.医療施設における新型インフルエンザA(H1N1)感染対策の手引き(第1版)日本環境感染学会 新型インフルエンザ病院感染対策のための提言検討委員会編


【参考】一般の医療機関及び薬局における留意点(再掲)

1. 一般の医療機関

(1)主な役割
・院内感染防止対策を行い、通常の診療と併せ、可能な範囲で新型インフルエンザ患者の診療を受入れ、適切に医療の提供を行う。
・登録事業者に登録した一般の医療機関においては、事前に定めた業務継続計画により、診療を継続する努力義務を有する。
・病診連携等により在宅療養の患者の診療を行う。
(2)府内未発生期~府内発生早期までの主な対応
一般の医療機関においては、新型インフルエンザの患者が、帰国者・接触者外来を受診せず、一般の医療機関を受診する可能性があることを踏まえた対応が求められる
ア.対応の内容
・症例定義に該当しない発熱・呼吸器症状を有する者を対象として診療を実施する。
・帰国者・接触者外来の対象者が一般の医療機関を受診する可能性があることから、感染対策を実施する。
・感染が疑われる者から、事前に電話連絡が入った場合、その内容から新型インフルエンザの可能性が疑われるときは、帰国者接触者相談センターに電話し、帰国者・接触者外来の紹介を受けるよう案内する。
・受付等において、帰国者・接触者外来対象者であることが判明した場合、帰国者・接触者相談センターを通じて、帰国者・接触者外来を受診するよう指導する。
・新型インフルエンザに感染している可能性が高いと考えられる患者を診察した場合は、保健所に連絡し、確定検査の要否について確認する。
・確定検査の結果が判明するまでの間は、他の患者と接触しない状況下で待機、入院するか、もしくは自宅待機の場合は、公共交通機関の使用を避けて、自家用車等で帰宅し、外出を自粛するなど人との接触を可能な限り抑制することとする。
・新型インフルエンザの疑似症患者について、感染している可能性がないと判断した場合当該患者に対して、適切に情報提供し、必要に応じて医療を提供する。
イ.留意点
・医療機関は、保健所が積極的疫学調査を迅速に行えるよう、待合室等において、手で触れることや対面での会話が可能な距離で必要な感染対策なく、新型インフルエンザの患者もしくは疑似症患者と接触したと思われる一般来院者及び医療従事者について、連絡先等の情報を整理した名簿を可能な限り作成しておく。
・医療機関は、一般来院者のうち、慢性疾患を有する定期受診患者については、定期薬の長期処方をしておく等、患者の状態に配慮しながら、府内感染期に医療機関を受診する機会を減らせるよう調整する。
・基礎疾患等を有する人が新型インフルエンザに感染した場合は、重症化するおそれが強いことから、当該基礎疾患等にかかる医薬品について、患者が指定した、かかりつけ薬局等にファクシミリ等で処方せんを発行することができるよう、事前にかかりつけの医師が了承し、その旨をカルテ等に記載しておく。
・慢性疾患を有する患者に発熱等の症状がある場合は、かかりつけの医師が相談を受け、受診すべき医療機関について指導する。
・かかりつけの医師が、慢性疾患を有する患者に対し、帰国者・接触者相談センターを通じて帰国者・接触者外来を受診するよう指示した場合は、当該患者の受診先の帰国者・接触者外来に、患者の基礎疾患等を記載した紹介状をファクシミリ送信することが望ましい。
・全ての医師は、保健所に、新型インフルエンザ患者の全数を届けなければならない。
(3)府内感染期における主な対応
・新型インフルエンザの患者について診療を行う際は、通常の院内感染対策に加え、新型インフルエンザの患者とそれ以外の患者とを可能な限り空間的もしくは時間的に分離する等の対策を講じる。
・空間的もしくは時間的な分離が困難な場合は、新型インフルエンザの患者について、診療を行う際は、患者にマスク着用を指導する。


2.薬局

(1)主な役割
・感染対策を講じた上で業務の継続
・ファクシミリ処方せんへの対応
・在宅療養者への対応
(2)府内未発生期~府内発生早期までの主な対応
・一般の医療機関における新型インフルエンザ患者の診療開始に備え、抗インフルエンザウイルス薬等の処方せんの応需体制を整備する。
(3)府内感染期における主な対応
・薬局は、ファクシミリ等により抗インフルエンザウイルス薬等の処方せんの応需体制を整備する。
・新型インフルエンザの患者以外の慢性疾患患者の処方せんについてもファクシミリ等により対応する。
・薬局は、可能な限り新型インフルエンザの患者とそれ以外の疾患の患者が接触しないように配慮する。府内感染期においては、医薬品は患者以外の者であって、新型インフルエンザを発症していない者(同居者、親戚、患者の依頼を受けた者等)が薬局で受け取ることを基本とし、服薬指導は電話で行う。
・医療機関は、患者の同意を得た上で、ファクシミリ等で送付した処方せんの原本を保管し薬局に送付するか、流行の終息後、当該患者が医療機関を受診した際に処方せんを渡し、薬局に持参させる。
・薬局は医療機関から処方せんの原本を入手し、ファクシミリ送信された処方せんと原本を差し替える。

【参考】新型インフルエンザの病原性による対策の選択について(概略)

実施する対策

病原性

病原性が不明又は病原性が高い場合

病原性が低い場合

発生段階

府内感染早期まで

府内感染期以降

府内感染早期まで

府内感染期以降

相談体制

帰国者・接触者

相談センター

コールセンター等

コールセンター等

コールセンター等

コールセンター等

外来診療

体制

帰国者・接触者

外来

帰国者・接触者外来以外の医療機関では、新型インフルエンザ等の患者の診療を原則として行わない。

一般の医療機関

一般の医療機関

一般の医療機関

新型インフルエンザ等の初診患者の診療を原則として行わない医療機関の設定

必要に応じて、新型インフルエンザ等の初診患者を原則として診療しない医療機関の設定

必要に応じて、新型インフルエンザ等の初診患者を原則として診療しない医療機関の設定

全数保健所へ届出

電話再診患者のファクシミリ等処方

必要に応じて、電話再診患者のファクシミリ等処方

入院診療体制

入院措置

全患者が入院治療

重症者のみ入院治療

重症者のみ入院治療

重症者のみ入院治療

院内感染対策

院内感染対策

院内感染対策

院内感染対策

待機的入院、待機的手術の自粛

待機的入院、待機的手術の自粛

定員超過入院

定員超過入院

臨時の医療施設等における医療提供

要請・

指示

必要に応じて、医療機関に対する要請・指示

必要に応じて、医療機関に対する要請・指示

検査体制

全疑似症患者にPCR

検査等実施

疑似症患者以外については、府が必要と判断した場合にPCR検査等実施

府が必要と判断した場合にPCR検査等実施

府が必要と判断した場合にPCR検査等実施

府が必要と判断した場合にPCR検査等実施

予防投与

抗インフルエンザウイルス薬の

予防投与検討

患者の同居者については、効果等を評価した上で、抗インフルエンザウイルス薬の予防投与を検討

参考:厚生労働省作成ポスター

「医療体制整備ガイドライン」について