広報ひらかた

手話で伝える・つながる
手話言語条例特集

 耳が聞こえない人にとって、日常生活のコミュニケーションツールの一つである「手話」。市は、聞こえる人も聞こえない人も互いを尊重し、いきいきと活動できるよう、昨年3月に「手話でつむぐ住みよいまち枚方市手話言語条例」を制定しました。気付かれにくい障害と言われる聴覚障害を知り、スムーズな意思疎通のために私たちができることを考えます。

 問合わせ先、福祉事務所(障害福祉担当)電話841-1457、ファクス841-5123

▲聞こえない市職員から「木」を表す手話を教わる様子。


手で話し、目で聞く
手話が母語の「ろう者」

 手話は、音声ではなく手指や体の動き、表情などで自分の意思を表現する「手で話し、目で聞く言語」と言われています。日本語や外国語と同じ「言語」の一つで、聴覚障害者のうち手話を母語とする「ろう者」にとっては情報の獲得とコミュニケーションの手段として重要な役割を担っています。


手話が言語として
認められない時代も

 十数年前までは手話が言語として認められず、自由に手話で話せる環境が整えられなかったことから、多くのろう者が不安を感じながら生活してきました。こうした中、平成18年に国際連合総会で障害者権利条約が採択され、日本でも平成23年に障害者基本法が改正。ようやく国内外で手話が言語として位置付けられることとなりました。しかし、いまだ一部の人だけが使う特別なものと認識されているため、一人ひとりが手話をきちんと理解することが大切です。


下記からより詳しく手話について学んでいきましょう!


手話について
STEP.1 知 る

「手話でつむぐ住みよいまち枚方市手話言語条例」を制定

 子どもからお年寄りまで誰もが手話を言語として認識し、聞こえる人も聞こえない人も互いを理解し尊重し合う暮らしやすいまちを目指します。


それぞれの役割

市:手話に対する理解やその普及、ろう者の社会参加を促進するための取り組みを推進します。

市民:手話やろう者に対する理解を深め、手話に関する取り組みに協力するよう努めます。

事業者:ろう者が利用しやすいサービスを提供するようにし、働きやすい環境を整えるよう努めます。


条例を知ってもらうパンフレットを配布

 より多くの人が手話を知り、理解を深めてもらえるようパンフレットを作成しました。市役所本館・別館受付、各支所・生涯学習市民センター、市内障害者相談支援センターなどで配布しているほか、市ホームページから見ることもできます。


Column
知っていますか?聴覚障害のこと
聞こえ方は人それぞれ

 一口に聴覚障害といっても聞こえ方は一人ひとり違い、音量が小さくなったように聞こえづらい、音質がゆがんだようで内容が聞き取れないなどさまざまですが、大きく2つに分けられます。「感音性」は鼓膜の奥で空気の振動を脳に伝える聴神経に異常があり、音は聞こえても言葉として正確に聞き分けることが難しいという特徴があります。もう一つは「伝音性」で、補聴器などで音を大きくすれば比較的聞き取りやすい人もいます。


会話の方法は手話だけじゃない

 聴覚障害の原因は生まれつき、病気・事故、加齢などさまざま。聞こえ方の違いや程度、育った環境などでコミュニケーション方法も異なるため、全く手話が分からない人や分かっていても人前では使わない人もいます。手話の他にも、相手の口の動きを読み取って言葉を発する「口話」、50音を一文字ずつ指の形で表現する「指文字」、「筆談」などいろいろな表現方法があります。



聞こえない人が困ること

✔外見では障害があることが分かりにくいため、声を掛けても無視されたと誤解されることがある。

✔災害時にテレビやスマートフォンから警報が鳴っても気付かず、状況判断が遅れてしまう。

✔声を掛けられても何を言っているか分からない。また、声に出して話せても細かいニュアンスまで表現することが難しく、真意が伝わらないことがある。

特にコロナ禍ではみんながマスクをしているので、表情や口の動きが読み取れず、相手の言いたいことを理解するのが難しいですね。

福祉事務所(障害福祉担当)山元 亮さん



手話について
STEP.2 理解する

【Interview】ろう者の交流の場 ろうサロン

ピアカウンセラー 森本 菜穂子さん

 障害者の生活相談・支援などを行うNPO法人パーソナルサポートひらかた(中宮山戸町10―12―105、ファクス848-7920)で平成26年から開かれている「ろうサロン」。毎週火曜午後には高齢者を中心に10人程度が集います。当事者で、ろう者の自立を支援するピアカウンセラーの森本さんにお話を伺いました。


心の中を自在に表現できる手話

 生まれつき耳が聞こえず、ろう学校に通いながら家族や友達とは口の動きを読み取って言葉を発する「口話」で会話していました。しかし、中学3年のときに通い出した地域の公立学校では、口話だと同級生と上手く話が通じず衝撃を受けました。筆談もありますが、思いをスムーズに伝えることは難しいため手話の必要性を強く感じ、地元の手話サークルで本格的に学び始めました。魅力は何といっても「心の中を自在に表現できること」。「手指の動きだけで思いを伝えられるんだ」と気持ちが軽くなり、自分の世界も広がりました。


周りの目を気にしない憩いの場を

 手話を使うろう者は手や表情、口の動きで会話します。昔に比べるとかなり偏見は少なくなりましたが、友達と喫茶店で会話したくても、どうしても周りの目が気になるという人が多いんです。気兼ねなくのんびり楽しんで話せる場があれば・・・。そんな思いで生まれたのが「ろうサロン」です。今はコロナ禍で参加者が減っていますが、簡単なゲームや季節にちなんだお菓子作りなどさまざまな企画で交流を深めています。「周りに気を遣わずホッと一息つける」「コミュニティが広がってうれしい」という声も多いですよ。

▲人差し指と中指で表現できる手話を出し合うゲームを楽しむ参加者。


簡単な手話でも安心できます

 耳が聞こえて手話が分かる人はなかなか少ないんです。新型コロナのワクチン接種では、スタッフの皆さんの口の動きがマスクで読み取れない上に手話ができる人がおらず、少し不安を感じたという知人もいました。簡単な手話だけでも覚えてもらえると、より正確に意思疎通ができるので私たちは安心できます。障害があってもなくても、みんなが手話で話せる社会になればうれしいです。



ろう者と話すとき 私たちができること

表情は柔らかく、ゆっくり話してみて

 耳が聞こえる人はろう者に比べて表情の硬い人が多く、特にマスクをしていると目元しか見えないのでより伝わりづらくなります。身振り手振りを交えて普段より表情や口の動きをゆっくりオーバーにしてみる、筆談やイラストを使う、難しい言葉や敬語表現は避ける・・・。手話ができなくても、少しの思いやりがあればコミュニケーションがスムーズになります。

表現の奥深さにひかれて

 手話に興味を持ったのは高校生のとき。指文字が載っているパンフレットを見かけ、手指だけでいろいろな言葉を表現できる奥深さに感銘を受けました。それ以来「聴覚障害がある人と対等に会話がしたい ! 」と少しずつ手話を学び、約15年前からはろう者のコミュニケーションを手話で支援する手話通訳者として活動しています。「ろうサロン」では参加者と会話を楽しみながら、森本さんが主宰する手話サークルで今も手話を勉強しています。同じ言葉でも年代によって、また方言のように地域で表現方法が異なるので面白いですね。

手話通訳者:篠原 慶子さん



手話について
STEP.3 学ぶ

すぐにできる!簡単な手話にトライ

 まずは日常生活で使える簡単な手話を覚えてみましょう。これらを会話のきっかけに、筆談などで会話してみてください。 大事なのは相手の目を見ながら「伝えよう」とする心です。


お疲れさまです

右手のこぶしの小指側で左手首を2回たたく。


ありがとう

左手の甲に縦にした右手を付け、垂直に上げる。


こんにちは

人差し指と中指を立てて眉間にあてる。→両手の人差し指を向かい合わせて立て、おじぎをするように折り曲げる。


枚方

左腕に右のこぶしを置き、つぼみの状態から花が咲くように開きながら手首へスライドさせる。

市の花「菊」がモチーフ!


よろしくお願いします

右手のこぶしを鼻に当て、前に出しながら手を開いておじぎする。



市がサポートします

365日どこでも遠隔で手話通訳

 市内在住のろう者が病院の受診や生活に不可欠なものの購入(携帯電話・高額商品)などで、手話による支援が必要なときは遠隔手話通訳が利用できます。時間は毎日午前9時~午後5時30分の間で1回につき15分まで。予約もできますが、空きがあればすぐに利用可。利用には福祉事務所(障害福祉担当)への登録が必要。詳細は同担当(電話841-1457、ファクス841-5123)へお問い合わせを。

窓口に専用タブレット10台設置

 市役所窓口でろう者とスムーズに会話し、遠隔手話通訳をもっと多くの人に使ってもらえるよう、昨年4月から市役所本庁舎と支所にタブレットを10台設置しています。利用時はお気軽に職員にお声掛けください。

手話を学んでみませんか

 ⑴簡単な日常会話を学ぶ入門クラス⑵聴覚障害者への理解を深める基礎クラス。場所はいずれもラポールひらかた。  ▶日時など ⑴4月6日~8月3日の毎週水曜(5月4日除く)午後7時~9時または4月7日~8月4日の毎週木曜(5月5日除く)午前10時~正午。各全17回。⑵8月17日~来年2月8日の毎週水曜(11月23日・12月28日・1月4日除く)午後7時~9時または8月18日~来年2月9日の毎週木曜(11月3日・12月29日・1月5日除く)午前10時~正午。各全23回。対象は18歳以上の初心者~初級者で⑴⑵全て受講できる人。平成29年度以前に受講した人の再受講可。子ども同伴不可。テキスト代3300円。 ▶申込 往復はがきに住所・氏名(ふりがな)・年齢・電話番号・ファクス番号、講習会名、希望曜日、受講動機を書いて〒573―8666市福祉事務所(障害福祉担当)へ。3月25日必着。抽選で各25人。