広報ひらかた

市民登場

No.733

料理研究家 為後 左依さん

◆ためごさえ

 辻学園専任講師として19年勤務後、独立。大学などで非常勤講師を務め、テレビや雑誌などメディアでレシピや料理を提供。sae's kitchen主宰。伊加賀西町在住。52歳。


 茶わん蒸しは弱火で蒸すと、約80℃で固まる卵液が沸騰せず、なめらかに美しく出来上がる。大学などで教えているのは「調理科学」。レシピの加熱温度や時間には食材の性質などからくる科学的根拠がある。「料理のなぜ?が分かると、学生たちは失敗せず、どんどん調理を好きになってくれるんです」とほほ笑む。

 国際線旅客課勤務を経て、料理を学ぼうと辻学園の門を叩いたのは26歳のとき。卒業後は「料理を教える側でありたい」と講師の道に進んだ。当時は結婚を機に退職する女性が多い中、「自分だからこそできる仕事を一生続けたい」と出産後に職場復帰をした第1号となった。仕事と子育て両立の忙しさに直面した30代の記憶は、ほぼない。保育園に車で迎えに行ったのに子どもを乗せずに帰ってきてしまったことも。「忙しかったけれど職場のサポートに感謝しかありません。私の礎を築けました」。独立したのは、もっと多くの人に料理の魅力を発信したかったから。仕事で得た縁がつながり、子ども向けの食育活動や地ビール開発のためのホップ栽培、著書出版がきっかけの器と料理のコーディネートなど活動は幅広い。いくつもの柱は、目の前の仕事を一つ一つ誠実に取り組んできた証だ。

 「コロナ禍で健康志向が高まっているからこそ食の大切さに注目が集まっていると感じています」。交野市内で主宰する料理教室では、発酵食品づくりにも力を入れている。みそやぬか漬けなどを常備することで、体に良いものを毎日手軽に取り入れられることを伝えたいからだ。手づくりならではの発酵食品の味わいにリピーターも多い。「やりたいこと はたくさんありますが、料理って楽しいと感じてもらえるよう、これからも走り続けます」。