広報ひらかた

市民登場

No.733

日本のベルトレスリング第一人者 田中 弘済さん

◆たなかひろずみ

 平成21年アジアインドアゲームズベルトレスリング競技で銀メダルを獲得。平成29年、民族格闘技研究所を設立し所長を務める。川原町在住。40歳。

 試合は腰に巻いたベルトを互いに掴み、組み合った体勢で始まる。相手を浮かせて背中から落とせば勝ちだ。いつでも仕掛けられる間合いだが、先手を取ろうと焦るあまり技が甘くなれば、反撃を受ける。勝利の鍵は「投げにいく勇気です」。

 基礎は学生時代に打ち込んだレスリングで磨かれた。なみはや国体3位入賞、翌年には日本代表に選ばれてイランへ遠征した。「街の人たちが鎖を振り回してるんです。もう衝撃でしたよ」。現地で出くわした宗教のお祭りが、海外文化に強い興味を抱くきっかけとなった。

 卒業後、コーチを務めていたジムでベルトレスリング世界大会出場を持ち掛けられる。道具も知識もない未知の世界だが、持ち前の好奇心に突き動かされた。「柔道に似た帯を使うと聞いていたんですけどね」。かき集めた情報だけで準備し乗り込んだカザフスタンでは、ベルトの太さ、材質など想定外の連続だった。「掴んだ感覚が全然違うのでびっくりですよ」。上を目指すためには、なにより道具が必要と身に染みた瞬間だ。百聞は一見にしかずと単身で繰り返した海外遠征が花開いたのは3年後。アジアインドアゲームズで銀メダルを獲得した。その後、コーチとしても活動。4年後に世界大会で弟子が金メダルに輝いた時には「仲間と抱き合いました」。

 民族格闘技研究所を立ち上げた理由は世界中の民族格闘技のユニフォーム集め(写真)。「日本で一番持っている自信がありますね。道具や知識がなければ準備ができないでしょう?」どれもマイナー種目だが、世界大会に採用されたら彼の出番。先頭に立って日本に金メダルを呼び込む。