広報ひらかた

市民登場 No.770

イラストレーター

相原 にこさん

◆あいはら にこ
神戸大学大学院文学研究科修了。塾講師を経て6年前にイラストレーターとして開業。アールヌーボーを代表する画家・ミュシャ風の作品などを手掛け国際デザインコンペティションブロンズ賞受賞。JR三ノ宮駅ビル改装時の神戸・大阪鉄道開業150周年テーマの装飾イラスト担当。宮之阪在住。42歳。


好きな絵を描き続けてきたことで
転機が訪れ、夢が叶ったんです

 一昨年、JR三ノ宮駅ビル改装工事中の装飾として神戸・大阪鉄道開業150周年がテーマの高さ約3m、幅15mの大規模なイラストを手掛けた。北野異人館やポートタワー、通天閣などパーツごとにペンで線描したノスタルジックな作品は昨春から10カ月間展示された。妊娠期間中であった中、今までで最も大きな作品の制作に丸2カ月を要した。「建物を細かい線で描くのはかなりの労力でしたが、駅利用者のSNSでの反響もありうれしかったですね」

 中学校ではイラストなどを描く文芸部に所属。暇さえあれば好きな漫画やゲームのキャラクターを描いていた。その様子を目にしていた母親に美大に進まないのか一度だけ言われたことがあるが「憧れはあってもプロのような絵は描けない」と美術の道に進むことに自ら蓋をし、絵を描くこと同様に好きだった歴史学を大学で学んだ。

 大学院修了後は、アルバイト経験のある塾業界へ。夜に講師として働く傍らホームページに趣味で描いた作品を載せていたことで仕事の依頼が舞い込むようになった。依頼されることで徐々に自分の絵に自信がつき、書籍の表紙絵を任されたことを機にイラストレーターとして開業した。「少しずつでも好きな絵を描き続けてきたことで転機が訪れ、夢が叶ったんです」

 ペンで描いた線画をデータ化し画像編集ソフトで色付けするというアナログとデジタルを組み合わせた手法で、ミュシャ風の女性画や愛読書の「南総里見八犬伝」の浮世絵風イラストなどレトロ感あふれる作品を手掛けているのが特徴だ。「線に特徴があるミュシャの絵が好きで模写し続けたことが同業者との差別化にもつながりました」

 昨年、念願だった子どもに恵まれたことで仕事への意欲も高まっている。「古典文学に関わるイラストのほか、レトロなデザイン系の仕事にも幅を広げていき、憧れだった絵の仕事を長く続けていきたいですね」