広報ひらかた

新春対談企画
OSK日本歌劇団 翼 和希 さん × 枚方市
in 総合文化芸術センター

夢の始まりは「好き」

表現の世界に生きる私が伝えられること

 子どもたちが自分の将来に希望を抱き追いかける夢。夢の始まりは人それぞれですが、多くの人は「好き」を見つけたときに始まるのではないでしょうか。
 令和6年の新春対談では、中学生時代に出会った「好き」を仕事にしている翼和希さんに、夢を追いかけることの大切さについて伏見市長と語ってもらいました。

OSK日本歌劇団
翼 和希 さん

枚方市長
伏見 隆

 問合わせ先、広報プロモーション課 電話841-1258、ファクス846-5341


翼 和希 さん

 平成25年にOSK日本歌劇団に入団し、男役スターとして高い歌唱力と力強い踊りに定評がある。枚方市在住で、令和5年8月から市PR大使に就任。10月から放送のNHK朝の連続テレビ小説「ブギウギ」ではヒロインが入団する歌劇団の男役スター役として出演。活躍の場を広げている。


OSK日本歌劇団

 大正11年に大阪で誕生し、令和4年に創立100周年を迎えた。戦前より宝塚歌劇団・松竹歌劇団(SKD)と並ぶ「三大少女歌劇」の一つとして人気を博し、大正15年に始まる「春のおどり」は大阪の春の風物詩として現在まで広く親しまれている。
 訪日外国人向けの日本舞踊ショーや地域振興コンテンツとして地域の偉人を題材にしたミュージカルなど、さまざまなジャンルの公演を大阪や京都、東京、そして福井や栃木、北海道などでも手掛け、OSKレビューの伝統を受け継ぎつつ、常に新鮮な舞台やイベントを作り続けている。


「好き」を見つけて世界が変わった

市長 本日はよろしくお願いします。

 よろしくお願いします。実はこの小ホールは約1年前にOSK日本歌劇団で枚方公演をさせていただいた場所なんです。施設のオープン時に見学して「ここで公演したいな」と思ったその年に実現できてとてもうれしかったことを覚えています。

市長 枚方在住の翼さんが枚方での公演を望んでくれていたというのはうれしいですね。翼さんといえば昨年10月から放送されているNHK朝の連続テレビ小説「ブギウギ」に出演するなど活躍の幅を広げていますが、今回のドラマ出演はどんな意気込みで挑戦されたんですか?

 やはり自分が所属する劇団や大先輩がモデルになったドラマなので、どんな役であっても関わりたいと思っていました。演じてみると、劇団の歴史を肌で感じることができ、当時の人物の感情や劇団の歴史を追体験できて本当に良い経験になりました。

市長 何か心境の変化はありましたか?

 OSKはドラマの題材になるほど波乱万丈な歴史を持つ劇団なので、そんな力強いOSKをこれからも存続させていきたいとより強く思うようになりましたね。

市長 ドラマでは鬼軍曹のような指導役でしたが、翼さんは指導が厳しくて辞めたいと思ったことはありましたか?

 鬼軍曹ですか(笑)たしかに厳しかったですが芸事の世界は厳しいと聞いていましたし、何より自分が好きな芸事を一日中学べる環境がうれしかったので、本気で辞めたいと思ったことは一度もなかったです。

市長 今や歌劇にドラマにと大活躍の翼さんですが、小さい頃から芸事の世界に憧れていたのですか?

 今この仕事をしていて「なんでやねん」と思われるかもしれませんが、小さい頃は人前に立つことが苦手でした。歌劇にも興味がなかったですね。

市長 歌劇と出会うまではスポーツに打ち込んでいたとお聞きしました。

 中学ではバレーボール部だったんですが、負けず嫌いで、バレーボール中心の生活でした。それがバレーボールを上回る「好き」に出会って一変したんです。

市長 その「好き」が歌劇だったんですね。歌劇との出会いのきっかけは何だったんですか?

 私が中学2年生の時、姉が借りてきた宝塚歌劇団のビデオを見たんです。まさに青天の霹靂で。画面の中に映る男役を見て「これや!」と衝撃を受けました。そこからはほぼ毎日、歌や踊りの練習に明け暮れました。

市長 切り替えがすごいですね!大きな変化ですが大変だったのでは?

 大変でしたが、そのときは目標がはっきりしていたので歌劇のことしか考えていなかったですね。

▲バレー部時代の翼さん


目の前が真っ暗になる
ほどの挫折

市長 翼さんは当初、宝塚歌劇団を目指していたとか。

 受験制限ぎりぎりの高校3年生まで4回挑戦しましたが、残念ながらご縁がなくて。最後の受験で不合格を知った時は目の前が真っ暗になりました。でも、教室の先生にOSK日本歌劇団のことを教えてもらいすぐにレビュー「春のおどり」を見に行って受験を決めました。郵送だと間に合わなかったので、願書は劇団事務所まで直接取りに行きました(笑)

市長 ぎりぎりのタイミングだったんですね。「ブギウギ」のヒロインも最初に受けた歌劇団を落ちていましたね。

 そうなんです。だからこそ自分と重なるところがたくさんあって。ヒロインのことを「来週には梅丸少女歌劇団と出会えるから大丈夫だよ!」みたいな感じで毎週応援しながら見てました(笑)

市長 不合格の後に知って入団した歌劇団で立派に活躍されているところも重なりますね。

 本当にご縁というのは不思議なものですね。ドラマで「恩人には義理がある。義理を返すのが人情だ」という内容のセリフがあるんですが、私にとってOSKはまさに大恩人で、いつか義理を返したいと思っています。


お客様に「もっと」を届ける

市長 「好き」を仕事にする上で翼さんが大事にしていることはありますか?

 お仕事として舞台に立つというのは、お客様にお金を払って見ていただくということです。お客様は同じ値段を払って見るなら「もっとすごいものを見たい」と考えます。その「もっと」を客席に届けられるように考えるのが私たち演者の大切な仕事なんです。

市長 どんな「もっと」をどうやって届けるかは、演者それぞれが考えていくものなんですか?

 もちろん先輩方の背中から学ぶこともありますが、そこから得たものを噛み砕いて自分なりに解釈していくことでその人の色になります。誰かから言われた通りに演じるのなら、その人が演じる必要はない。表現の世界は個人の意思が大事なんです。舞台は演じる人、演じる回によって違います。それが生の舞台の楽しさだと思いますね。


夢追う二人 × 翼和希さん

市長 ここからは枚方市少年少女合唱団のお二人にも参加していただきます。鈴江陽菜さんは卒団後も団のサポートを続けておられ、横山舞さんは現役団員として活躍されています。よろしくお願いします。

鈴江・横山 よろしくお願いします!

 実は、昨年の8月に大ホールで行われた枚方市少年少女合唱団の定期公演にもお邪魔しました。こんな大きな舞台で立派な照明や大道具・小道具を使って表現できる場があることは素晴らしいことだと感じました。

市長 本当にそうですね。二人は小学5年生のときに入団したとお聞きしました。大人になるとプレゼンなど人前で発表する機会が増えるので小さい頃から人前で表現することに慣れているのは良いことですね。二人はどうして合唱団に入団し、どんな経験をされてきたんですか?

鈴江 私は演劇に興味があって、枚方市少年少女合唱団では合唱だけでなく演劇もできると聞いて入団しました。中学3年生でベルサイユのばらのマリーアントワネット役を経験したんですが、ソロパートが多く、観客の視線が自分に集中する中、自分の演技だけでお客さんを楽しませることが難しいと感じました。

市長 その難しさはどうやって克服したんですか?

鈴江 とにかく練習しました。当時の自分にできることはそれしかなかったので。

 十分すごいことですよね!中学3年生の私ならできなかったと思います(笑)

◀左から伏見市長、翼和希さん、横山舞さん、鈴江陽菜さん


市長 翼さんも鈴江さんと同じような経験はありましたか?

 私も感じたことはあったと思います。今はお客様に何を届けられるか、どんな気持ちになってもらいたいかということを考えています。ただそれには目をつぶってても歌える、踊れるまで練習をして自信を持って立てるようにお稽古することが大事ですね。

市長 そこが本当にプロフェッショナルなところですよね。横山さんはどうですか?

横山 私は人の中に入っていくのが怖い時期がありました。そんなとき合唱団で、団員同士が息を合わせることでより良い演技ができるということに気づき、コミュニケーションの大切さを学びました。私もベルサイユのばらのオスカル役を演じたんですが、お客さんに見てもらえる幸せを知って、今後も演劇に携わっていきたいと思うようになりました。

市長 舞台が自分の居場所だと感じたんですね。


大事なのは集中力、向き合うべきは自分

市長 鈴江さん、横山さんは今後も芸事の世界を目指して活動されると聞いています。お二人から翼さんに聞いてみたいことはありますか?

鈴江 私は合唱団の活動を通じて舞台演者という夢を見つけました。現在は事務所での活動が始まり大学との掛け持ちで忙しくなりました。翼さんは忙しい時、どうやってモチベーションを保っていますか?

 やりたいことに一生懸命になれるのは大事なことです。お二人ともきっと集中力は人一倍あると思うので、自分を信じて授業・芸能それぞれ目の前のことに集中してメリハリをつけると良いと思います。それと、合間合間に何も考えずぼーっとする時間もあると良いですよ。

横山 私は他の人と比べられた時どう受け止めればいいか分からなくて。翼さんはそんな時どのように受け止めていますか?

 まず比べられても「自分とその人は違う」と思うようにしています。もし、自分に足りないものがあると思うなら他人とではなく自分と向き合って努力すべき。比較された時に自分を卑下せず、比較した人に「自分の引き出しを増やす肥やしになった、ありがとう」と感謝すれば良いと思います。


全ての子どもたちにきっかけを

市長 皆さんは「好き」を見つけて一生懸命に努力しているところが本当に素敵だと感じました。市では枚方市こども夢基金という事業があります。全19中学校の一年生を対象に大阪フィルハーモニー交響楽団のコンサートを実施したり、プロのオーケストラから指導を受けてこの総合文化芸術センターで発表する場を提供したり、さまざまな体験の場を用意しています。今後も枚方に住む子どもたちが皆さんのように「好き」を見つけて生きる力にしてもらえるよう取り組んで行きます。

 とりあえず勉強してとりあえず進学しても「好き」が見つからないこともあります。体験の機会が増えるのは良いことですね。

市長 鈴江さん、横山さんの今後の抱負を教えてください。

鈴江 私は芸の道を走り出したばかりですが、そのきっかけとなった恩人であり義理がある合唱団にいつか恩返しがしたいです。

横山 私も家族や合唱団、学校の先生や友だちに恩返しができるよう、どんな努力をしてでも表現する人であり続けたいです。

 お二人とも本当に素晴らしいですね。好きなものに出会った時、それを仕事にしようと決断することはとても難しいことで、私自身は自分を支えてくれた人がいたからできたと思っています。舞台は自分と向き合う仕事であると同時に、お客様も含めそういった支えてくれる周囲の人たちに感謝することを忘れちゃいけないですね。

市長 最後に翼さんから合唱団のお二人に向けて伝えたいことはありますか?

 舞台で表現する仕事を目指すのであれば、きっと思い通りにならないことなど「好き」だけでは続けられないことが出てくると思います。そんな中でも最高のパフォーマンスをするためには、どうすれば良くなるかを自分で考えて意思表示することが大切です。もちろん独りよがりにならないように自問自答も必要ですが、「生身の人間が表現する仕事」に就くなら自分の意思を殺してしまわないように幹をしっかりと持って頑張ってください。

市長 本日はありがとうございました。

翼・鈴江・横山 ありがとうございました!


枚方市少年少女合唱団

 音楽を通じた青少年の健全な育成と市民文化の向上のため、市主催で昭和46年に設立。市内在住・在学の小学3年生~高校3年生で構成され、枚方公園青少年センターで週1~2回練習し、年1回の定期発表会とクリスマスコンサートで練習成果を披露しています。

◀令和5年度定期発表会「ミュージカル アラビアンナイトより アラジンと魔法のランプ」


子どもたちの夢を応援
枚方市こども夢基金活用事業

 質の高い芸術やスポーツに触れる機会によって子どもたちの夢を育み、またプロフェッショナルの育成にもつながるよう事業に取り組んでいます。詳細は市ホームページ参照。

令和5年度の実施事例

◆プロとの交流で文化芸術を担う人材を育成

 公募の中高生による吹奏楽団を結成し、連携協定を締結する大阪フィルハーモニー交響楽団のメンバーの指導で練習や演奏会を経験することで子どもたちの夢を育み、将来の文化芸術を担う人材を育成します。

◆トップアスリートと一緒にスポーツ体験

 トップスポーツチームが集結するスポーツ体験会を開催。子どもたちがいろいろなスポーツにチャレンジし、自分の好きなスポーツや楽しさを見つけてもらうことを目的に取り組んでいます。

◆介護の仕事への理解を深める体験

 子どもたちが介護福祉士のユニフォームを着て、遊びなどを取り入れたリハビリ「遊びリテーション」や車いす体験、介護食などの介護現場を体験しています。