広報ひらかた

市民登場 No.756

水都くらわんか花火大会代表

井關 拓史さん

◆いせき たくじ
 和歌山県生まれ。大学進学で枚方市へ。飲食店経営のほか、昨年、第1回水都くらわんか花火大会を開催。(一社)HEROでは自身の経験を基に子どもの居場所作りにも力を入れる。藤阪在住。37歳。


 昨夏、約20年ぶりに枚方での花火大会を復活させた。約5000発規模の大会開催を目標に8年前から準備を重ね実現した。打ち上げ場所から近く、影響を心配していた関西医科大病院の入院患者から「闘病中に花火が見られてうれしかったと感想をもらえたことは今年の開催の励みになっています」

 学生時代に友達と花火大会を見た思い出はない。あり余るエネルギーから周囲と衝突し友人が離れていったからだ。中学時代から20代半ばまで孤独感から精神的な生きづらさを感じていた。そこから抜け出せたのが花火だった。「枚方に花火大会があった時代を惜しむ人の声をたくさん聞き、復活させたいと動き出したら体力の限界まで動く熱量の高い仲間が集まり寄り添ってくれたことが大きかったですね」。全国の花火大会が資金難などで中止が相次ぐ中、「クラウドファンディングなどで資金を集め、警備ボランティアを募るなど市民主体で開催できているのが枚方の花火のすごさです」と目を細める。

 一方で「生きづらさを感じた自分にしかできないことに取り組みたい」と立ち上げた一般社団法人HEROでは、居場所がない子どもたちのために一緒に畑作業をしたり、避難できる生活の場を提供したりしている。「死ぬ日を決めていた女の子が、この場所を訪れたことで生きることを選び、社会で活躍している。頼ってもらえることはうれしいですね」

 今年の花火大会では4704発を打ち上げる。枚方と高槻で昨年生まれた子どもの数だ。子どもたちに自分の背中を立派に見せられるよう成長していこうとの思いが込められている。「花火のおかげで僕がこの街で生きていて良い理由をもらった気がしているんです」。鳴りやまない電話連絡にも冷静に対応しながら9月17日の開催まで全力で駆け抜ける。