広報ひらかた

特集 認知症になっても笑顔で暮らし続ける

 9月は認知症月間です。平成29年度に内閣府が発表した高齢者白書では、令和7年には高齢者の5.4人に1人が認知症になるという推計が示されており、認知症は誰もがなり得る疾患です。一方で、大切な人が認知症になったらどんな生活になるのか、誰を頼ればいいのかなど、あまり知られていないことも。大切な人とずっと笑顔で過ごせるように、認知症について考えてみませんか。

 問合わせ先、健康福祉総合相談課 電話841-1401、ファクス841-5711


認知症と診断された妻・豊子さんを自宅で約5年間介護した棚橋正夫さん(長尾元町在住・87歳)。今でも診断後の豊子さんの写真を大切にしています。


オレンジガーデニングプロジェクト

 認知症啓発のシンボルカラーであるオレンジ色の花を咲かせて「認知症になっても暮らしやすいまちをみんなで創っていこう!」という思いを共有する取り組みが市内で行われています。

▲地域包括支援センター「サール・ナート」で花を育てる皆さん。


認知症サポーター養成講座

 認知症の正しい知識を学び、本人や家族を温かく見守る応援者を養成。受講者にはオレンジリングを配布。ひらかたポイント対象事業 ▶日時など 9月28日㈭午後2時~3時30分、総合文化芸術センター別館。無料。▶申込 9月1日から電話またはファクス・専用フォーム(右記コード)に住所・氏名・年齢・電話番号、講座名を書いて健康福祉総合相談課へ。先着100人。


体験談
認知症になった妻の自宅介護を振り返って

76歳で妻が認知症に

 結婚50周年を記念して私が手作りした感謝状に満面の笑みで喜んでくれたわずか2年後、妻は認知症と診断されました。覚えているのは「洗濯機が壊れた」と言った妻の声。あちこちボタンを押し間違えたせいでロックがかかっていました。その他にもテレビのリモコンを電話の子機と間違えて「もしもし」と話したり、コンロの火をつけていることを忘れて鍋を焦がしたり、ついには自宅の場所が分からず買い物途中に迷子になりました。

ケアマネジャーから認知症への対応を学ぶ

 友人から介護保険制度のことを聞き、利用するためすぐに地域包括支援センターで要介護認定の申請を依頼しました。とても親切で何でも相談できる雰囲気でした。そこで紹介されたケアマネジャーからは「絶対に本人を責めず、寄り添う言い方で優しく接してあげてください」と教えられました。簡単なことではありませんでしたが、30年前に亡くなった祖母はどこかと聞かれ「買い物に行ったのかも」と答えるなど、とにかく否定しないように気を付けました。この頃、すでに亡くなった私の祖母や飼い犬の居場所を繰り返し聞かれるようになりましたが、こうした質問には事前に答えを用意することが効果的でした。  また、徘徊などでもお世話になるかもしれないと思い、近所の人に妻の認知症を知らせました。すると「今後はそのつもりで接します」といった協力の言葉や、認知症に関する情報を教えてもらえ、隠すのではなく周知して良かったと感じました。

つらいが施設入所は必要だった

 真夜中に畳の上で排泄することが続くようになり、身体の洗浄と下着の洗濯で私の心身は疲れ切ってしまいました。ケアマネジャーから「これ以上続ければあなたが倒れる」と言われて施設入所を決断。入所の日、最後の二人での朝食を終え、デイサービスに出かけるだけと思い込んで私に笑顔で手を振る妻を見送りました。「もう、この家には二度と帰ってこない」と思うと涙があふれました。入所したての頃は不満そうにしていた妻でしたが、施設の生活に慣れると以前のように明るさや笑顔が戻り「入所させて本当に良かった」と安心しました。体調が良い時には妻が好きだった和食を食べに外出することもできました。それから約1年後に誤えん性急性肺炎で亡くなるまでの間、妻は穏やかで楽しい時間を過ごせたと思います。

相手のためにも一人で抱え込まないで

 片時も目が離せず逃げ場もない自宅介護は、自覚と覚悟が必要です。その極限状態で排泄と幻視・幻覚症状の対応が続くと、素人ではとても手に負えませんでした。介護者・被介護者が共倒れになる前にプロにお任せすることで妻にも楽しい時間を過ごしてもらうことができたことを多くの人に知ってもらえればうれしく思います。

▲施設で料理をしたときの姿を「格好いい」とほめるとすごく喜んだそう。

▲外出許可をもらって食事へ。入所後もたくさんの笑顔が棚橋さんの思い出に残っています。


妻・豊子さんの症状の経過

●平成24年

・家電の操作方法が分からない
・買い物で迷子になる
・認知症と診断

●平成26年

・亡くなった義祖母や飼い犬はどこかと繰り返す
・買い物で迷子になる
・認知症と診断

●平成27年

・家の中でトイレの場所が分からない
・炊飯器と間違えてポットに米を入れる
・衣服を着る順番が分からない

●平成28年

・幻覚や妄想で騒ぐ

●平成29年

・家事全般ができない
・連日連夜の失禁で限界を感じて施設入所を決断

平成30年

・誤えん性急性肺炎で永眠

▲施設で料理をしたときの姿を「格好いい」とほめるとすごく喜んだそう。

▲外出許可をもらって食事へ。入所後もたくさんの笑顔が棚橋さんの思い出に残っています。


今、なぜ認知症か

星ヶ丘医療センター
もの忘れ外来
森 敏 先生

 誰でも、40歳〜50歳になると、「人の名前が出てこない」「物の名前が出てこない」など、もの忘れが始まります。これらのもの忘れには、放っておいてもよい「良性のもの忘れ」と、認知症の初期症状が疑われる「悪性のもの忘れ」があります。

認知症とは

 「記憶の障害に判断の障害が加わり、仕事や日常生活に支障が出てきた状態」をいいます。この記憶の障害と判断の障害は同時には起こらず、まず悪性のもの忘れが現れ、その後判断の障害が加わります。そこで、認知症の前駆症状である「悪性のもの忘れ」を見分けることが重要になります。

良性のもの忘れと悪性のもの忘れを見分けるポイント

 悪性のもの忘れの特徴は、「すっかり忘れている」ことです。また、「進行する」「忘れていることを自覚できない」ことも、両者の鑑別ポイントになります。悪性のもの忘れは、「同じことを何度も尋ねる」ことで気づかれます。これは直前に尋ねたことが記憶に残らないためです。

軽度認知障害から認知症へ

 悪性のもの忘れが生じても、判断が適切に行えるうちは認知症とはいえません。この悪性のもの忘れのみが見られる時期を「軽度認知障害」といいます。時間の経過と共に悪性のもの忘れが著しくなり、判断の障害が加わると日常生活にも支障が出てきます。この段階を認知症と呼びます。

もの忘れ外来

 もの忘れの原因はさまざまです。認知症以外に、睡眠薬や神経障害性疼痛治療薬が原因のこともよくあります。また、難聴も原因になりえます。最近話題のアルツハイマー病の疾患修飾療法において、主な対象者は軽度認知障害です。そこで、改善可能な病態を見逃さず、治療の機会を逃さないためにも、早期の受診をお勧めします。

認知症高齢者を地域で支える

 老いた親を支えることは、基本的に家族の問題です。しかし、家族のみで介護することは困難です。そこで、「介護保険サービスの活用」が必要です。認知症高齢者には、徘徊や不潔行為などが見られることがありますが、これらを迷惑行為と捉えるのでなく、病気のために適切な行動がとれなくなっていると患者の立場に立って考えることが大切です。その人がその人らしく人生を全うできるように援助することが介護の目標になります。


森先生が解説する動画は市公式YouTubeチャンネルへ


森先生が分かりやすく解説!
認知症の診療~最近の話題~

【第1部】認知症診療の最近のトピックスを森先生が解説。
【第2部】「認知症の心配ごと、地域包括支援センターにご相談ください」をテーマに同センター職員が説明。 ▶日時など 9月28日㈭午後2時~4時、枚方市医師会館2階大講堂。▶申込 9月5日~20日にファクス・はがきに参加者の住所・氏名・電話番号を書いて枚方市医師会(ファクス848・1601、〒573―1197禁野本町2―14―16)へ。先着300人。詳細は健康福祉総合相談課へお問い合わせを。


困ったときは最寄りの地域包括支援センターへ
(高齢者サポートセンター)

3つの専門職が相談をお受けします

医療の専門職
保健師

権利擁護の専門職
社会福祉士

介護の専門職
主任ケアマネジャー


どんな支援がある?

◆介護保険の説明
◆介護保険利用に必要な要介護認定の申請代行
◆相談先が分からない悩み相談 など


オレンジ初期集中支援チームを知っていますか?

 医師(認知症サポート医)と医療・介護の専門職の3人以上で構成されるチームで、訪問・面談で認知症による困りごとを確認し、今後の対応を一緒に検討します。チームでの支援後も安心して生活できるよう、医療機関受診や介護サービス利用などの調整・支援も行います。サポートを希望する場合は同センターへ相談を。


気になることは何でも早めに相談を

 認知症になった後もできる限り地域で暮らし続けるためには、家族の介護も必要ですが、公的な支援制度を適切に利用いただくことが重要です。今はまだ根本的な治療法が確立されていませんが、早期に適切な機関につなぐことで認知症患者本人と介護する家族が、その後の生活をより良いものにしていくための準備ができます。身近な人の症状に気づいたときは、すぐにかかりつけ医やお近くの地域包括支援センターに相談してください。

健康福祉総合相談課長
辻本 裕香


徘徊行動への備え

 認知症などで記憶力・判断力が低下すると、道に迷ったり家がどこか分からなくなる「徘徊」が起こることがあります。徘徊行動による行方不明者などの早期発見につながることが期待できる次のようなサービスを利用しましょう。詳細や申込方法は健康福祉総合相談課または地域包括支援センターへお問い合わせを。

ひらかた高齢者
SOSキーホルダー

 緊急連絡先を書いたキーホルダーを身に付けることで、救急搬送や保護されたときに、医療機関や警察などが速やかに連絡できます。

徘徊高齢者
SOSネットワーク

 介護保険事業者などと連携し、徘徊高齢者を早期発見するためのネットワークを構築しています。同ネットワークの利用には本人の顔写真や特徴などの事前登録が必要。

みまもりあい
ステッカー

 徘徊する恐れのある高齢者などの衣服や持ち物に貼り付けるステッカー。発見者が記載のフリーダイヤルに電話することで家族などに直接つながります。一部有料サービスあり。


住んでいる小学校区ごとに担当センターが異なります

平日午前9時~午後5時30分

対象校区:【樟葉北・樟葉・樟葉南】
社協こもれび

電話856-9177、ファクス856-9188


対象校区:【樟葉西・牧野】
社協ふれあい

電話850-0344、ファクス850-0366


対象校区:【船橋・招提・平野・ 殿山第二】
聖徳園

電話836-5555、ファクス836-5556


対象校区:【小倉・西牧野・殿山第一・ 磯島】
安心苑

電話807-3555、ファクス805-3030


対象校区:【交北・山田・山田東・ 禁野】
サール・ナート

電話890-7770、ファクス890-7771


対象校区:【桜丘・桜丘北・中宮・ 明倫】
松徳会

電話805-2165、ファクス805-2166


対象校区:【蹉跎・蹉跎西・蹉跎東・ 伊加賀】
美郷会

電話837-3288、ファクス837-3289


対象校区:【山之上・枚方・枚方第二】
みどり

電話845-2002、ファクス845-2003


対象校区:【香陽・香里・開成・五常】
アイリス

電話853-1300、ファクス853-2300


対象校区:【春日・川越・東香里】
大阪高齢者生協

電話854-8770、ファクス854-8780


対象校区:【菅原・西長尾・長尾】
パナソニックエイジフリー

電話864-5607、ファクス864-5608


対象校区:【田口山・藤阪・菅原東】
大潤会

電話857-0330、ファクス857-0332


対象校区:【津田・津田南・氷室】
東香会

電話897-7800、ファクス897-7801