広報ひらかた

市民登場 No.751

印章技術で日本一

近藤 誠さん

◆こんどう まこと
 印章店・せんば堂2代目。国家資格・印章彫刻一級技能士。平成30年、なにわの名工に選ばれる。昨年10月には全国印章技術大競技会で最高位の経済産業大臣賞を受賞。香里ケ丘在住。50歳。


 昨年10月、全国印章技術大競技会に木口実印の部で出品し各部門1位の中から選ばれる経済産業大臣賞に輝いた。実用的なはんこである木口実印で日本一になるのは極めて稀で、彫る技術に加え美しく印を押す技術も問われる。「制作中は粗しか見えず、賞を狙っていなかったので驚きました」と謙遜する。

 高校卒業後、数年の会社員生活を経て、21歳で父が創業した印章店・せんば堂の2代目となる。先代の時代からはんこの彫刻は職人に任せていたが、41歳の時にはんこの彫刻技術を学ぼうと府印章業協同組合の講習会に参加する。「20代の頃、はんこの彫刻は無理だと挑戦せず諦めたんですが、はんこ屋なのに自分で彫れない引け目があったんです」。スタートこそ遅かったが、長年、職人の傍らで仕事風景を眺めていた経験は大きく「スポンジが水を吸収するかのように寝る間も惜しんで夢中になり技術を身に着けました」。日本一に輝いた今も、先人の優秀な印章から技術を学ぶため紙に写して何度も手書きし、注文とは別に彫る練習も怠らない。「持ち味である線の美しさを保つには、納得のいく作品が出来上がるまでしつこくやり抜いてしまいますね」

 行政手続きからはんこが不要になる流れがあるが、「はんこは単なる文具ではなく、人の意思を預かり代弁するもの。その文化はなくなりません」と断言する。「だからこそお客さまにとって一生もののはんこを作るという意識が大切だと思っています」

 今年から同組合の技術講習会講師を正式に引き受けた。「技術だけでなく人の意思を預かる唯一無二のはんこを正しく作るんだという気概も伝えたい」と気を引き締める。「これからも技術を磨いて実績を上げ、はんこを大事にしようとしてくれる人に選んでもらえる職人であり続けたいですね」。