広報ひらかた

知ってほしいヤングケアラーのこと

子どもらしく過ごせる時間を守る

 近年、明らかになってきた「ヤングケアラー」の存在。家事や家族の世話を日常的に行い、家庭を支える子どもたちの「子どもらしく過ごせる時間」を守るために何ができるでしょうか。

 問合わせ先、子ども青少年政策課 電話841-1375、ファクス843-2244


 ヤングケアラーとは、大人が担うような家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを日常的に行う18歳未満の子どものことです。
 昨年、市内の市立小学校5年生・6年生と市立中学校1年生~3年生を対象に実施した実態調査では、回答者のうち、小学生の16・6%、中学生の7・4%が「ヤングケアラーと考えられる」という結果でした。うち半数近くがほぼ毎日家族の世話や手伝いをしていると回答し、ケアにかける時間の平均は小学生が平日1・8時間・休日3時間で、中学生が平日1・7時間・休日2・6時間でした。


実態調査の詳細はこちら


ヤングケアラーと考えられる人の割合※

中学生:7.4%

小学生:16.6%

※「家族の世話・手伝いをしている」と回答した人のうち、世話や手伝いをしていて、ケアを必要とする家族がいる人 子どもの生活に関する実態調査 回答数:小学生…4615人、中学生…3071人


例えばこんなケアを担っています

・障害や病気のある家族の代わりに買い物や料理・掃除・洗濯などの家事をする
・日本語が話せない家族や障害のある家族のために通訳する
・幼いきょうだいの世話をする
・精神疾患のある家族の話を聞く
・障害や病気のある家族と一緒に病院へ行く     など

 ケアの内容や負担の程度は家庭によってさまざまですが、自分のことや勉強に充てる時間が十分に取れなかったり、ケアのことを周りに話すことができず孤独を感じたりすることが明らかになっています。


VOICE 一人で抱え込まずに周りを頼って

NPO法人 ふうせんの会
高岡 里衣さん(たかおかりえ)

元当事者の声

約24年に渡って母親のケアに携わり、現在はNPO法人ふうせんの会でヤングケアラーへの支援を行っています。


自分の予定も決められないもどかしさ

 難病の母のケアに携わった9歳から33歳までの約24年間、母に代わって買い物や料理、洗濯、掃除などの家事をしたり、通院の付き添いをしたりしていました。少しでも早く下校できるよう部活動はせず、友だちの誘いも「ちょっと帰らなあかんくて」と理由もそこそこに断ることも。自分の予定すら思うように決められないことにもどかしさを感じていました。初めは「お母さんのお見舞いに行く」などと理由を説明していましたが、入退院を繰り返していたため「この前退院したって言ってたやん」「付き合い悪いなぁ」などと言われることもあり、自分や家族のことを人に話すのはやめようとだんだん思うようになりました。


頭ごなしにしからないで

 学生の頃、ケアの疲れからか、授業中に寝てしまったこともありました。その時「学校の授業はどうでもいいのか」とみんなの前で怒られて、悲しいような恥ずかしいような気持ちになったのを覚えています。
 学校で寝たり遅刻したりすることを頭ごなしに怒ったり評価を下げたりするのはやめてほしい。もし事情があった場合、学校に行きたくなくなるだけでなく、「どうせ大人に言っても無駄」と諦めてしまう子どももいます。


声を掛け続けてくれると心強い

 当時、大人はみんな忙しいと感じていて、呼び止めてまで話を聞いてもらおうとは思えませんでした。普段から「困ったら、いつでもなんでも言ってきてな」などと声を掛け続けてくれる人がいてくれたら心強かったと思います。
 また、褒めてもらうのはありがたいですが、ほかの家族を責めないでほしい。自分では「いつも私ばかり」と思っていたとしても、家族のことを悪く言われるとその人からは離れようと思うものです。


「自分だけじゃない」と安心してほしい

 ふうせんの会の運営メンバーになったのは令和3年夏頃。「つどい」(左記参照)に参加したときに聞いた元ヤングケアラーの経験談が自分とよく似ていて、共感したことがきっかけで運営メンバーになりました。
 自分の経験を話すことで、ケアをしている子どもたちに「自分だけじゃない」と安心してほしいし、家族のために一生懸命頑張っている自分のことを褒めてあげて、全部一人でやろうと抱え込まずに周りを頼っていいんだよと伝えたいです。


NPO法人 ふうせんの会

 枚方市・大阪市を中心に現・元ヤングケアラー、支援者が集まり活動。ヤングケアラーの子どもたちが自分らしく生きていけるような社会を作るため、サポートや啓発活動、関連団体との交流・連携などを行っています。


ケアラー同士で交流

◆ふうせんカフェ

 現・元ヤングケアラー、若者ケアラーが集まり、2人程度の運営メンバーとオンラインで話します。


◆つどい

 現・元ヤングケアラー、若者ケアラーが集まり、ケアの経験を共有したりフリートークをしたりする場(写真下)。話を聞くだけでも参加できます。


ふうせんの会ホームページ


VOICE まずは程よい距離で見守って

大阪歯科大学 医療保健学部 教授
NPO法人 ふうせんの会 理事
濱島 淑恵 さん(はましまよしえ)


支援者の声

当事者たちと一緒に設立したNPO法人ふうせんの会の理事を務めています。


まずは程よい距離で見守り声を掛け続けて

 「もしかして、ヤングケアラーかも」という子どもを見かけても、「なんで子どもが家事をしているの?」「家族はどういう状態なの?」などと、初めから心をこじ開けようとするのではなく、まずは程よい距離で見守ることが大切です。以前、精神疾患の母親のケアをしている当事者とお会いしたときに聞いた話ですが、近所のおばちゃんが会うたびにあいさつしてくれたり、「なんかあったらいつでも言ってね」と声を掛けたりしてくれたそうで、実際に相談したことや状況を変えてくれたことはないけど、困ったときに話を聞いてくれる存在がいることに安心したと話していました。


背後にいる大人への支援も重要

 ヤングケアラー支援には、まずは周囲の理解や子どもへの支援、息抜きの場などが地域にあることが大切です。同時に、その子の家庭にいる「しんどい大人」を助けないと、根本的な解決になりません。
 例えば、介護が必要な祖母とともに暮らしているひとり親の母親と子どもの世帯で、母親の仕事が忙しく、子どもが祖母の世話をしているケース。そこには十分にケアされていない祖母や家庭のことに手が回らず、疲労した母親という2人の大人がいます。祖母が十分な介護を受けられ、母親もしっかりサポートされていると、子どもは安心して学校に行けますし、自分のことを中心に考えられます。
 ヘルパーサービスも同居家族がいたら家事支援をしてもらえなかったり、病気や障害のある本人のご飯は作ってくれても一緒に暮らす子どもの分は作ってくれなかったりしますよね。「世帯として安定していればよい」という考え方が浸透していて「だったら世帯の一員である子どもがやっていれば大丈夫」という考えになりがちですが、子どもたちが子どもらしく過ごせるように社会全体で向き合わなければいけません。


もっと理解を深めませんか

シンポジウムヤングケアラーが「いきる」社会をつくる

無料

2月13日㈪午後1時30分~4時
総合文化芸術センター本館
関西医大 小ホール

 家族のケアを担う子どもや若者たち、ヤングケアラーをテーマに濱島淑恵さんの解説と、当事者や支援者それぞれが現状や課題を議論。オンライン開催あり。保育(生後6カ月以上の未就学児5人)・手話通訳あり。▶申込 2月6日までに専用フォーム(右記コード)またはファクス・メールに氏名(ふりがな)・電話番号・メールアドレス、会場またはオンライン参加希望、保育・手話通訳の有無を書いてふうせんの会(ファクス06-4790-8882、メールinfo@ycballoon.org)へ。電話(電話06-4790-8881)可。抽選で会場200人、オンライン100人。

 問合わせ先、子ども青少年政策課 電話841-1375、ファクス843-2244


子どもが笑顔で健やかに成長できるまちへ

市の取り組み

 市は令和3年3月に「子どもを守る条例」を制定し、誰一人取り残さず全ての子どもに寄り添ってきめ細やかな支援を行うため、3つの基本理念を掲げ、取り組みを進めています。
 ヤングケアラー支援に関することでは、スクールソーシャルワーカーやコミュニティソーシャルワーカー、子どもやその家族と関わる関係機関がヤングケアラーを把握し、市で多機関による支援方針を検討し、支援制度につなげています。


「子どもを守る条例」3つの基本理念
子どもの権利擁護

子どもにとって一番良いことは何かを考える


子育ち支援

主体的に生きる力を育む


子育て支援

子どもに寄り添い、家庭を丸ごと応援する


調査結果を受けて支援を拡大

実態調査(2ページ参照)の結果を受けて、支援を拡大する取り組みを進めています。

共通の視点で早期に気づく

 実態調査では、「世話をしている家族がいる」と回答した人のうち、誰かに相談したことがない人の割合が小中学生ともに8割近くに上っています。支援につなげるためには周囲の大人が気づくことの重要性が明らかとなった一方、関係機関からは「つなげる窓口が分からない」「お手伝いとの違いが分かりづらい」などの意見がありました。
 さまざまな関係機関が共通の視点を持ち、早期にヤングケアラーの存在に気づくことができるよう、啓発ツールの作成や関係機関向けの研修などの取り組みを進めていきます。


家事支援制度を新設

 実態調査では、小中学生ともにケアの内容は「家事」が最も多い結果でした。既存の事業を活用するとともにヤングケアラーがいる世帯が利用できる家事支援制度を新設し、関係機関と連携して支援します。

◀家事に続いて、小中学生ともに「きょうだいの世話や送り迎え」「入浴やトイレの世話」が次いで多い結果でした。


社会全体で見守りませんか

市内の相談窓口

 市内に、子ども本人や保護者、地域住民向けの相談窓口があります。枚方に住む子どもたちを社会全体で見守り、子どもたちが子どもらしく過ごせる時間を守っていきませんか。気になることがあれば気軽に連絡を。


子育て、親子関係、友人関係のこと

子ども相談課

電話050-7102-3221、ファクス846-7952

 子育て、親子関係、友人関係のことなど18歳未満の子どもに関するさまざまな相談に応じます。


健康・福祉・介護・子育てのこと

健康福祉総合相談課

電話841-1401、ファクス841-5711

 健康・福祉などの困りごとを聞き、制度やサービスを紹介したり、解決に向けて一緒に考えたりします。必要に応じて職員が関係部署に案内するので、どこに相談したらよいか分からない場合でも気軽にご相談を。


生活・福祉に関すること

枚方市社会福祉協議会(いきいきネット相談支援センター)

電話807-3448、ファクス841-0182

 福祉に関する困りごとや悩みごとについて、福祉や地域の情報に詳しいコミュニティソーシャルワーカーが相談に応じます。


学校や友だちのこと、心配なことなど

教育安心ホットライン

電話809-2975

 幼児・児童・生徒、保護者、教職員などが対象。学校や友だちのこと、困っていることや分からないこと、心配なことは何でも相談をしてください。いじめや不登校、発達に関する相談などにも応じます。