広報ひらかた

市民登場 No.748

近畿大学総合社会学部教授

石井 隆之さん

◆いしい たかゆき
 専門は理論言語学(英語と日本語の文法研究)と英語教育。通訳ガイド研究会会長、言語文化学会会長としても活躍。TOEIC対策の書籍なども多数出版。長尾西町在住。66歳。


 「英語を学ぶ者、日本文化を学ぶべし」と日頃から学生に伝えている。自身が学生時代、外国人に東大寺を案内すると「仏様って何」と質問され答えに窮した経験があるからだ。研究室には日本の歴史・文化に関する資料も並ぶ。「なぜ神社で柏手を打ち、寺では手を合わせるのか。風習だと説明するだけでは本当の意味で通訳したことにならないんですよ」

 中学校で出会った英語の先生の授業に感銘を受け、英語教諭を目指し奈良教育大学に進学する。在学中に通訳案内業(現在の全国通訳案内士)に合格。英語をマスターしたい気持ちから家族や友人、外出先の店員にも英語で話しかける徹底ぶりに「迷惑がられましたね」と苦笑する。

 卒業後は専門学校などで講師を歴任し、英語力に自負はあったものの「英文法を究めたい」と30代半ばに筑波大学大学院に入学。大阪に家族がいる中、週5日は大学院、週1日は大手予備校で講師をする生活を続けた。「貯金を切り崩しながら家族を養い大学院に通えたのは妻のおかげ」と振り返る。これまでに何冊もの辞書をぼろぼろになるまで使い込み学んできたが、英語圏に足を運んだことは一度もない。「留学せずとも英語は1人でも学べるし、努力は裏切りません」。世界中の人と意思疎通できるのが英語の魅力と考えるが、全ての人に英語学習を無理強いしない。「英語は必要に迫られれば学ぶはず。それより日本の文化を深く知るほうが大切かな」

 来春、25年間奉職してきた近畿大学を退官する。講義数は専門学校時代を含め1万回以上、教え子は5万人を超える。「元来、人と話すのが好きなんです。目標は120歳までしゃべって役に立ち続けることですね」。通訳ガイド研修や講演、執筆などを通じて英語と日本文化の伝道師としての活躍を誓う。