広報ひらかた

市民登場

吉岡 正見(よしおか まさみ)さん

昭和13年大分県生まれ。左手のけがで大工を引退後、5年かけて全国の国宝や重要文化財の五重塔23塔の詳細な外観・断面図を描いた。茄子作4丁目在住。76歳。

 国宝や重要文化財に指定されている全国の五重塔23塔の外観と断面図を描いた。「素晴らしい匠の技を後世に伝えたい」と、図書館などから取り寄せた資料を元に、社寺建築を手掛けた大工としての経験を生かして屋根の曲線や瓦一枚一枚に至るまでペンで精密に再現している。創建の由来やスケッチも添えた。「宗派や地域で木材の組み方や屋根の素材が違って個性があるんです」。出来上がった図面を原寸の100分の1サイズに縮小し、7世紀の法隆寺から明治の善通寺まで年代順に並べた図集は横6mに及ぶ。「ここまで精密で一覧にまとまったものは他にはない」と胸を張る。
 子どもの頃からとにかく絵を描くことが好きだった。大分県の生家のふすまは落書きだらけ。「授業中も教科書の挿絵の模写ばかりしていました」。父を戦争で亡くしたことで絵描きになる夢を諦め、15歳で大工の世界へ。すぐに高度経済成長期を迎え、多忙の日々を過ごした。趣味で絵を描く時間を持てなくなったが、「完成予想図は彩色にも人一倍こだわっていました」と笑う。脚立から落下して左手を痛めたことで70歳で現役を引退。「絵が好きで大工の経験もある。自分にしかできないことをやろう」と五重塔を描き始めた。
 5年掛かりで描き上がった図は各社寺に奉納してきた。京都の東寺では構造を説明する資料として塔のそばに掲げられている。「多くの人に見てもらえるのはありがたい」。今、さらに小さなサイズも作成し、全国の図書館など身近な施設への寄贈を進めている。東大寺大仏殿にも挑戦中だ。「資料集めや寄贈を通しての出会いで世界が広がった。感謝の気持ちを忘れず続けたい」。