長期財政の見通し　平成21年2月作成版（概要版）

平成20年9月のアメリカ発の金融危機と、その後に続く世界的な経済不況の影響を受け、我が国においても企業の経営状況が悪化し国内消費も低迷するなど、本市を取り巻く社会情勢、経済情勢の変化は、かつてないほど急激かつ急速です。こうした中、これからも市民サービスを安定して提供していくためには、健全な財政状況の維持が一層重要となります。また、本市独自の課題として、新病院や総合文化施設の建設があり、財政面からその実現可能性を明らかにしていく必要があります。本市では、平成19年3月に「長期財政の見通し～健全化の歩みと今後の展望～」を策定しましたが、その後は、社会経済情勢の変化に応じて見通しのローリングを行っていくこととしていました。今年も、前述の世界的な経済不況の影響などにより、基幹収入である市税収入が大きく減少する見込みとなるなど大きな情勢変化が見られたため、収支見通しの見直しを行うものです。

本計画は、平成19年3月に策定した「長期財政の見通し」で示した次の3つの基本姿勢を踏まえて策定しています。今後も引き続き、これらの基本姿勢を踏襲することとして収支見通しを作成しています。

経済変動や地域社会の変化に即応し、新たな行政需要にも対応できる弾力性のある財政構造の確立を目指します。

堅実な財政運営により、収支均衡を図ることを基本とします。

人口の減少や働く世代の減少が予想される中、次世代を担う子どもたちに財政面での過度な負担を残すことのないよう、あらたな事業の実施にあたっては、その必要性とともに財政面からの実施可能性についても十分精査していきます。

平成19年6月に公布された「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」、いわゆる「財政健全化法」では、「実質赤字比率」「連結実質赤字比率」「実質公債費比率」「将来負担比率」の4つの指標について早期健全化基準や再生基準を定め、いずれかの基準を超えた場合には、財政健全化計画または財政再生計画を定めなければならないとされています。また、これまでも用いてきた経常収支比率、市税収入に対する人件費の割合、社会資本の後世代負担比率などの指標についても注意を払いながら財政の弾力性を保ち、後世代への負担にも配慮した財政運営を進めていきます。

本計画では普通会計を対象とし、算定期間は、平成20年度を基準年度として平成29年度までの10年間としています。

各費目の試算において前提となる地方財政制度や社会保障制度などについては、今後、大幅な制度改正が行われる可能性がありますが、現時点で収支見通しに反映させることは困難なため、現行制度を基本とし、すでに決定している制度変更などについては可能な限り反映させることとしました。

また、行政改革の取り組みについては、「枚方市構造改革アクションプラン【改定版】」を中心とした取り組みを着実に進めることとし、平成22年度から24年度の3年間で各年度1億円ずつ効果額を見込んでいます。

各年度の試算方法については、平成20年度は作成時点における決算見込み額を算出し、平成21年度は当初予算額をベースにその後の不用見込額等を加味して算出しています。

平成22年度以降の各費目の試算方法は、下記のとおりです。

市税は、ベースとなる今後の経済成長率を平成23年度までは0％、平成24年度以降は1％として算出しています。また、個人市民税における納税義務者数は、高齢化の進展や団塊の世代の退職などにより、平成20年度以降、期間を通じて減少するものとし、法人市民税における法人数については、平成23年度まで減少すると見込んでいます。固定資産税については、平成21年度、24年度、27年度に評価替えの影響を反映させています。こうしたことから、市税全体では、平成24年度まで減少し、その後は、おおむね横ばいで推移するものと見込んでいます。

総合文化施設PFI事業や新たな投資的事業に対する起債額を積み上げ、公社健全化に伴う公共用地先行取得債を加えて算出しています。また、現行の地方財政制度においては、地方交付税の交付団体では市税の増減分の一定割合を地方交付税と臨時財政対策債を増減させることで収支の均衡を図ることとされています。昨年度までは、市税現年度分の増減額は基本的に地方交付税に影響させていましたが、平成21年度の地方財政対策で地方税の減少分の大部分が臨時財政対策債で措置されることとされたことを受け、今年度から、市税現年度分の75％相当額の1年2月を臨時財政対策債で見込んでいます。

その他の項目のうち、地方交付税については、臨時財政対策債と同様に市税現年度分の増減額の75％相当額の1年2月を反映させました。国庫支出金および府支出金は、扶助費や投資的経費など、対象事務事業の歳出に連動し、一定割合で見込んでいます。地方譲与税および交付金については、21年度予算額をもとに一定額を見込み、売却可能資産の積極的な処分などによる収入等についても一定額を見込んでいます。また、退職手当基金や減債基金、財政調整基金などの基金繰入金についても各年度で見込んでいます。

平成20年10月に策定した「構造改革アクションプラン【改定版】」では、平成18年3月に策定した「構造改革アクションプラン」に掲げた平成16年4月1日から平成25年4月1日までに普通会計の職員数700人程度の削減目標について、引き続き取り組みを進めることとしています。そのため、退職者数と採用者数について、構造改革アクションプランに基づく職員数の減少を見込み、人件費を算出しています。また、給料の定期昇給率は、期間を通じて1％としています。
こうしたことから、人件費は平成20年度以降もおおむね減少を続けるものと見込んでいますが、27年度は退職者数の増加が見込まれるため、前年度に比べ3.1%増となっています。

扶助費については、厚生労働省の「社会保障の給付と負担の見通し」による平成18～27年度までの将来予測を参考に、29年度まで毎年一定率で伸びていくものとして見込んでいます。

公債費については、既発債に係る元利償還金のほか、平成20年度以降の新発債について、金利2％、3年据置15年償還の条件で算出した元利償還金を見込んでいます。なお、平成24年度に公債費が大きく増加していますが、これは総合文化施設PFI事業において、既発債の借り換えを行うことを想定しているためです。

地方債残高は、公社経営健全化による起債等の発行や前述のとおり臨時財政対策債の発行が多くなる見込みであることから、期間を通じて1000億円を超える見込みとなっています。また、平成26年度に地方債残高が大きく増加していますが、これは総合文化施設PFI事業の建設工事に係る起債発行を想定しているためです。その後は投資的経費50億円をベースとして償還額を上回らないよう新発債の抑制に努めることにより、減少傾向をたどっていくと見込んでいます。

投資的事業については、総合文化施設PFI事業のほか、各年度、新病院整備事業に関する繰出金と牧野駅東地区再開発特別会計への繰出金とを合わせて概ね50億円程度を基本に事業費および事業費に対する財源を算出しています。なお、今後の見込みの中で、平成22年度と26年度に50億円を超える事業費となっていますが、これは公社経営健全化のための用地取得や総合文化施設PFI事業の実施を想定しているためです。総合文化施設PFI事業の事業費およびその財源は、次の通りです。

新町2丁目地区（ラポールひらかた横）に、総合文化施設を整備する事業で、整備手法については、民間の資金と技術力を活用する「PFI方式」の採用を検討しています。事業費および実施時期の詳細については、今後の経済情勢や財政状況を踏まえて、引き続き検討していくこととしていますが、今回の収支見通しでは事業費総額を158億円、平成24年度に用地の買い戻し、平成25年度に工事着手することを前提に試算を行っています。

補助費には、病院事業や水道事業に対する繰出金、消防組合に対する負担金、各種団体に対する補助金などが含まれます。収支見通しでは、以下の通り新病院の整備に関する繰出金を見込んでいます。

老朽化した市民病院の建替えを行う事業で、現在の市民病院の東側に新たな用地を確保して新たに建設する計画です。今回の収支見通しでは、用地購入費を含めた整備費用を181億円、事業着手を平成21年度からとして試算を行っています。

各特別会計への繰出金は、過去の実績等を踏まえ、個別に算出しています。

下水道特別会計への繰出金については、経営健全化により人件費をはじめとする経費削減を着実に進めていくことにより、基準外繰出しの見直しを行うこととしています。

介護保険特別会計と後期高齢者医療特別会計への繰出金については、厚生労働省の「社会保障の給付と負担の見通し」による平成18～27年度までの将来予測を参考に、毎年度一定の伸びを見込んでいます。また、老人保健特別会計へは平成22年度まで、自動車駐車場特別会計へは平成25年度まで、牧野駅東地区再開発特別会計へは平成23年度まで、それぞれ繰出金を見込んでいます。

その他の項目のうち、物件費については、今後の物価上昇分として毎年0.5％の増加を見込んでいます。
維持補修費については、施設の老朽化が進んでいることから、毎年2％の増加を見込み、積立金などについては過去の決算額を元に算出しています。